もっともらしくウソをつき
7年前に建てた家を手放す、なんて
誰がどう考えても、何かあったから、に違いないだろう。
何もなかったように、など、どうやったらできるんだろう。
「親の介護のために、実家を直して、向こうに住むことにした。
そういうつもりではなかったけど、長男の弟がわけあって家を継げなくなった。
なので、とても残念だけど、改築資金のために家を売るのよね。」
どうだ、これなら、大変だけど、あり得ないことではない。
誰もがある、よくあることだ。
親の介護が始まったのは、本当だったし。
教室の荷物を仕事場として借りたアパートへ運び、私と娘の荷物を少し離れた1LDKへ
運んだ。悲しくて悔しくて、涙も出なかった。
家から新しい住処までの道沿いは長い桜並木。
最後に夫を残して家を出た時、
ちょうど満開になろうとしていた。
隣の娘に「キレイだね」と言ったけれど
その時の私は、キレイという気持ちなんかすっかり忘れていた。
大好きだったあの家を出てから、3年半がたつ。
凝った造りの注文住宅は、たたかれてたたかれて
半年後にやっと売れた。
ローンはなんとかちゃらになったけど、本当になんにも残らなかった。
あれからも、仕事で近くを通るけど、
まだ一度も家の前の道を通ったことはない。
引っ越してすぐに植えたバラの花、とてもよく育って大好きだった。
後で誰かが「全部抜かれていたよ」と教えてくれた。
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